都市の細胞分裂が急速化しています。本来、細胞分裂とは生物の成長の証であり、歓迎されるものであるので

すが、今都心・郊外等の戸建て分譲の実態における土地の細胞分裂は必ずしも歓迎されるものばかりではないと

思います。 かつては良質な住宅が並んだ地域を市場原理の数字合わせだけにより細分化され、常識はずれな、

いわゆる狭小地(細長、旗竿、異形など)が急速な細胞分裂を起こしながら発生しています。

昨今、その居住環境としてのマイナス条件を抱えた場所においても、その場所にこだわる人、建築家のアイデ

ア、現代のテクノロジーまたは、ライフスタイルの変化等により魅力的な住宅が次々と誕生していますが、まだ

ごく一部です。 都心において多くの場合、細かく短冊状に割られた土地に、前面1階に駐車場を設け、家の中

は細かく壁で区切られた相変わらずのnLDKの間取りが横行し、光の入らない構造的にも不安定な木造3階建が

隣家との間にエアコンの室外機を置く程度の「忘れられた隙間」を空けてびっしりと並ぶ光景が造らています。 


 そこで一戸建てという夢は残しつつも土地有効利用の観念から、かつての東京では当たり前であり今でも海外

の多くの都市での一般的な居住形態である「長屋」を見直すことで少しでも多くの人が集まって有意義に暮らす

都市空間ができるのではないかと考えます。「幅50センチの忘れられた隙間達」を造らない事で、その分を逆

に印象的な場造りに生かす事ができると思います。

 具体的にこの長屋形式が最も必要とされ、生かされるべき土地はどの様な所でしょうか? それは都心のいわ

ゆる住居系用途地域で厳しい高度斜線により建築できる高さを抑えられている地域です。

より多くの人が集まって住むのに必要な空間の絶対的なヴォリュームが法律により制限されている所です。すな

わち都内住宅地のほとんどが、この条件下に置かれているのです。 将来の人口減少傾向により土地は逆にあま

るという意見も有りますが、逆に都心部への人口集中は更に進行中であり、この長屋形式が広まる事が望まれる

と考えます。

 
  長屋形式にする事により、家と家の間にできる無駄な隙間を無くし、その分の貴重な空間を採光・通風又は

  生活に更なる潤いを与える場への転用を可能にします。

 
 
別棟の2世帯住宅として計画し、将来家族構成等の変化に合わせ、境になっている壁の一部に開口を設け隣

  と一体とする事で、一戸建住居への転用も可能。

 
  基本的に一戸建を横に繋げた形式なので、一般の集合住宅の様に下階の他の住人に対する音等の配慮が無く

  なり、各戸ごとに自由なプランニングが可能です。


建物断面イメージ

 
  2戸を所有し1戸を賃貸住宅として貸し出しも可能です。

 
  どの部屋に誰が住んでいるのか解らない大規模集合住宅ではなく隣人とのコミュニケーションが自然と生ま

  れ、お互いの生活に心配りする、良質な住環境の形成がなされます。また、町並みの形成にも役立ちます。


※長屋:2以上の住戸又は住室が開口部のない壁又は床を共有し、廊下、階段等の共有部分を有しない 建築物を

    いいます。テラスハウスがこれに含まれます。


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